AIという言葉を聞くたびに、うちには関係ない、と思っていませんか。塗る仕事はAIにはできません。それは事実です。でも、社長が現場から帰ってきた後にやっている仕事、たとえば見積、写真の整理、報告書、投稿文。AIが得意なのは、まさにそこです。この記事では、塗装会社が何から手をつければいいのかを、順番に沿ってお伝えします。
まだ6割が使っていない。だから今が入りどきです
中小企業のAI利用について、公的機関がまとまった調査を出しています。全国の中小企業10,000社に配布し、1,668社から回答を得たものです。
- AIを導入している ── 20.4%
- 導入を予定・検討している ── 18.6%
- 導入していない ── 61.0%
まだ6割が手をつけていません。慌てて全部やる必要はない、ということです。同時に、今から始めれば十分に早いということでもあります。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表)。調査期間 令和7年11月17日〜12月12日、全国の中小企業10,000社に配布・有効回答1,668社(うち建設業249社)。
AIが入っているのは、現場ではなく事務です
同じ調査で、社内のどの部門でAIが使われているかも出ています。ここが今日いちばんお伝えしたい部分です。
- 総務・管理の仕事 ── 68.3%
- 営業・販売・サービス ── 60.3%
- 経営・企画 ── 58.5%
- 製造・生産(=現場の仕事) ── 34.9%
現場が一番低いのです。そして事務が一番高い。
塗装会社に置き換えると、こうなります。足場を組む、下地を作る、塗る。この仕事はAIには渡せません。渡せるのは、社長が夜や日曜に片づけている書類仕事の方です。
導入した会社が実際に感じた効果も、はっきりしています。「業務効率化・作業時間の短縮」が83.2%で突出していました。つまりAIは売上を魔法のように増やす道具ではなく、時間を返してくれる道具だということです。
失敗するのは「全部やろうとしたとき」です
調査では、導入できていない理由も聞いています。上位は次のとおりでした。
- 成功事例・活用事例などの情報が足りない ── 83.3%が不足と回答
- どのツールや会社を選べばいいかの情報が足りない ── 79.8%
ツールが悪いのではなく、何にどう使えばいいかが分からないのが本当の壁です。だから、いきなり全部を変えようとすると必ず止まります。
おすすめの順番はこうです。
毎週やっている、面倒な作業を1つだけ選ぶ。
それをAIに渡してみる。
楽になったら、次の1つに進む。
これだけです。1ヶ月で1つ。1年で12個も減れば、社長の夜の時間はかなり変わります。
塗装会社が、最初に渡すといい仕事
効果が出やすい順に並べます。上から試してみてください。
1. 現地調査のあとの報告書づくり
撮ってきた写真から、施主さまに渡す診断報告書を作る作業です。今まで手書きやワードで1〜2時間かかっていたものが、写真を入れるだけで形になります。しかも施主さまに残る紙が増えるので、成約にも効きます。ここが一番おすすめです。
2. Googleマップやブログの投稿文
週1回の投稿文を毎回考えるのは大変です。施工した内容を2〜3行伝えるだけで、文章にしてくれます。ただしそのまま出さず、必ず読んで直すこと(後述します)。
3. クチコミへの返信文
返信は24時間から72時間以内が理想ですが、忙しいと後回しになります。特に低い評価がついたときは、感情が入らない冷静な文章を作るのにAIが向いています。
4. お客様への説明資料
塗料のグレードの違い、なぜこの工程が必要か。毎回口で説明していることを、1枚の紙にしておけば使い回せます。
5. 見積書や請求書の下ごしらえ
数字そのものはAIに任せず、社長が決めます。AIに渡すのは体裁を整える部分だけです。
逆に、最初に手を出さない方がいいのは「AIで新しい事業を始める」「全部を自動化する」といった大きな話です。まず今ある仕事を1つ楽にする。そこからです。
これだけは守ってほしい3つのこと
AIは便利ですが、使い方を間違えると信用を落とします。塗装会社が気をつけるのはこの3つです。
1. 数字と固有名詞は、必ず自分で確かめる
AIはもっともらしい嘘を書きます。金額、築年数、塗料の名前、保証年数。これらをAIに考えさせてはいけません。事実は社長が入れて、AIには文章を整えさせるだけにしてください。
2. お客様の個人情報を入れない
お名前、住所、電話番号をAIに打ち込まないでください。写真から住所や表札が写り込んでいないかも確認します。
3. 読まずに出さない
AIが書いた文章をそのまま投稿すると、どこか他人事の文章になります。施主さまは意外とそれを感じ取ります。必ず読んで、自分の言葉に直す。ここは省略できません。
AIが増えるほど、人の価値は上がります
最後に、いちばん大事なことをお伝えします。
AIが文章も画像も作れるようになると、みんなが同じような綺麗なホームページと、同じような投稿文を持つようになります。そうなったとき、何で選ばれるでしょうか。
実際に屋根に上って見た人の言葉です。10年前に塗った家がどうなっているかを知っている経験です。近所の◯◯さんのところもやりました、という信用です。これはAIには作れません。
だからAIに渡すのは事務仕事だけでいいのです。そして空いた時間を、施主さまと話す時間、現場を丁寧に見る時間、OB客に点検の連絡をする時間に使う。それがAIと共存するということだと思っています。
まとめ
- まだ6割の中小企業がAIを使っていない。今からで十分間に合う
- AIが入っているのは現場(34.9%)ではなく事務(68.3%)。塗る仕事は奪われない
- 効果の1位は時間の短縮(83.2%)。売上より先に、時間が返ってくる
- 失敗の原因はツールではなく、何に使うか分からないこと。だから1つずつ
- 数字と固有名詞は必ず自分で確認。個人情報は入れない。読まずに出さない
まずは今週、面倒だと感じた作業を1つだけ思い出してみてください。そこがスタート地点です。
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