屋根に上って、外壁を一周見て、写真を撮って、見積を作って持っていった。それなのに「検討します」で終わる。塗装会社にとって、これがいちばん痛い失注です。この記事では、施主が現地調査のあとに断る本当の理由を、実際のアンケート調査の数字から明らかにします。結論を先に言うと、原因は価格でも腕でもありませんでした。
施主がいちばん怖いのは、金額ではありません
外壁塗装の経験者195人に「業者選びで心配だったこと」を聞いた調査があります。1位と2位は次のとおりでした。
- 相場より高い請求をされる ── 36.9%
- 手抜き工事をされる ── 23.6%
ここで注意して見てほしいのは、1位が「高い」ではなく「相場より高い」だという点です。そして2位の手抜き工事も、自由回答では「屋根の上など、素人目ではわからないところで手抜きされないか」という言葉で語られています。
この2つに共通しているのは、金額の大きさではありません。自分では正しいかどうかを確かめられないという不安です。
出典:訳あり物件買取ナビ by AlbaLink「外壁塗装の業者選びで心配なことランキング」外壁塗装経験者195人へのインターネット調査(2025年7月26日〜8月9日実施・自社調査)。
施主にとって外壁塗装は、一生に1回か2回の買い物です。屋根には上れない。塗料の違いも分からない。工事の中身も見えない。正しさを判断する材料を持っていない状態で、100万円前後の決断を迫られているわけです。
この状態の人がとる行動は、断ることではありません。決めないことです。「検討します」は、断りの言葉ではなく、判断できないという意味のことが多いのです。
安い会社が勝つわけではない、という事実
もう1つ、別の調査があります。外壁塗装リフォームを実施した1,000人に「施工業者を選んだ決め手」を聞いたものです。
- 信頼・実績 ── 41%
- 価格 ── 30%
- 技術力の高さ ── 7%
価格より信頼が上に来ています。そして技術力は7%しかありません。腕がいらないという意味ではなく、施主には腕を見分ける方法がないということです。だから信頼という別のものさしで選んでいます。
出典:リフォマ「外壁塗装リフォームみんなの選び方徹底リサーチ」直近2年以内に外壁塗装リフォームを実施した1,000人へのインターネット調査(2016年10月実施)。
先ほどの195人調査でも、選んだ決め手は「価格に納得した37.9%」「対応が良かった30.8%」でした。ここも「価格が安かった」ではなく「価格に納得した」です。
納得というのは、金額の隣に理由があるということです。この工事がなぜ必要で、なぜこの金額なのか。それが分かったとき、人は納得します。
そして、半数は比べてすらいない
同じ195人調査で、相見積もりを何社取ったかも聞いています。
- 1社のみ ── 45.1%
- 3社 ── 26.2%
- 平均 2.1社
ほぼ半数が、1社しか見ていません。ここが重要です。
現地調査に行って断られたとき、多くの社長は「他社が安かったんだろう」と考えます。でも数字を見ると、そもそも比較されていないケースが半分近くある。つまり他社に負けたのではなく、その場で決めきれずに止まっているということです。
ちなみに1,000人調査では、満足した人の反省として「他社の見積も取ればよかった」という声も挙がっています。逆に言えば、比較されないうちに納得させられれば、その場で決まるということでもあります。
本当の原因は、調査したことが伝わっていないこと
ここまでの数字をつなげると、失注の構造が見えてきます。
社長は屋根に上がって、北面の苔を見て、シーリングの切れを確認して、下地の状態から工事の内容を判断しています。頭の中では、根拠のある提案ができあがっているわけです。
ところが、施主の手元に残るのは金額が書かれた紙1枚です。
- どこを見たのか、残っていない
- どんな状態だったのか、写真がない
- なぜこの工事が必要なのか、書かれていない
- やらなかったらどうなるのか、伝わっていない
施主は、この紙を持って家族に相談します。奥様に、あるいは離れて住む息子さんや娘さんに。そのとき金額しか説明できません。他に材料がないからです。そして家族はこう言います。「高くない?」「他も見たら?」
断られた理由は、腕でも価格でもありません。社長が現場で見たことが、施主の手元に残らなかったことです。
では、どうすれば決まるのか
やることはシンプルです。頭の中にある根拠を、紙に出す。それだけで変わります。
1. 写真を残す
調査中にスマホで撮った写真を、そのまま渡すのではなく「どこの、何の状態か」を添えて渡します。北面の苔、シーリングの切れ、チョーキング。屋根の上は施主が絶対に見られない場所なので、写真1枚の価値がとても高いです。
2. 状態を言葉にする
「劣化しています」ではなく「シーリングが切れて、雨水が入る手前の状態です」。専門用語を並べる必要はありません。素人が読んで分かる言葉で、事実を書きます。
3. 金額の隣に理由を置く
「外壁塗装一式 ◯◯円」ではなく、なぜその工程が必要かを1行ずつ添えます。納得の正体は、金額の隣にある理由です。
4. やらなかった場合を書く
今なら塗装で済むが、あと3年放置すると下地の補修が必要になり費用が上がる。この一文があるかないかで、緊急度の伝わり方が変わります。ただし煽らないこと。不安を煽る点検商法と同じに見られたら逆効果です。事実だけ書きます。
5. 家族に見せられる形にする
これが意外と効きます。決めるのは目の前の施主ですが、相談相手は家族です。その場にいない人が読んでも分かる紙を残せば、社長がいない場所でも提案が続きます。
大手リフォーム会社が立派な診断書を出してくるのは、これをやっているからです。腕は地元の職人の方が確かでも、残る紙で負けている。逆に言えば、ここは今日から埋められる差です。
まとめ
現地調査まで行って断られる理由を、数字で整理するとこうなります。
- 施主が最も恐れているのは高い金額ではなく、正しいか判断できないこと(心配ごと1位=相場より高い請求36.9%)
- 選ばれる決め手は価格より信頼(信頼・実績41% > 価格30% > 技術力7%)
- 半数近くは比較すらしていない(1社のみ45.1%・平均2.1社)=負けたのではなく決まっていない
つまり、値引きで勝とうとするのは方向が違います。やるべきは、現場で見たことを、施主の手元に残る形にすることです。
社長はもう現場で正しいことをしています。足りないのは、それを伝える紙だけです。
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